カーリースでもらい事故!相手の保険が足りず違約金が払えない時の完全回避策
「過失ゼロのもらい事故なのに、なぜ数百万円の違約金を払わなければならないのか?」カーリース契約において、このような理不尽なトラブルが後を絶ちません。
車が全損した場合、契約は強制解約となり、残りのリース料や設定残価が一括請求されます。問題は、加害者の保険から支払われる「車の時価額」と、リース会社が請求する「違約金」の間に大きな差額が生じ、被害者であっても多額の自己負担を強いられる点です。
本記事では、もらい事故特有の法的な罠と、泣き寝入りせずに自己負担ゼロで危機を乗り越えるための完全防衛策を徹底解説します。
もらい事故(過失ゼロ)でもカーリースが強制解約になる理不尽な理由
カーリースを利用中に他車から追突されるなどの「もらい事故」に遭った場合、多くの契約者は「自分には一切の過失がないのだから、リース会社への対応や金銭的負担も加害者がすべて肩代わりしてくれるはずだ」と考えがちです。
しかし、法務および保険実務の現実において、この認識は致命的な誤りです。車両が修復不可能な状態に至った瞬間、被害者である契約者には「強制解約」という極めて厳格な契約上のペナルティが突きつけられます。この理不尽とも言える事態は、民法上の不法行為責任と、自動車リースにおける特有の契約法理が全く異なる次元で機能していることに起因します。
車両返還が不可能になるという契約上の絶対ルール
自動車リース契約の本質は、法的には民法上の「賃貸借契約(民法601条)」に分類される一方で、実質的にはリース会社が契約者の代わりに車両購入代金を立て替え、長期間にわたり元本と金利を回収する「ファイナンス・リース(金融契約)」の性質を色濃く併せ持っています。この契約構造において、リース会社はあくまで車両の「所有者」であり、契約者は「使用者」にすぎません。
カーリース契約における最大の絶対条件は、「契約期間中、リース車両を善良な管理者の注意義務をもって維持・管理し、契約満了時にあらかじめ定められた価値(原状)を保った状態で返還すること」です。

したがって、事故によって車両が滅失し、この「目的物の返還」が物理的または経済的に不可能となった時点で、賃貸借契約はその根拠を失います。
実務上、事故による損害状態は、契約の継続可否を決定づける厳格な基準として機能します。損害の程度は以下の表に示す区分によって判定されます。
| 損害の区分 | 状態の定義および実務上の判断基準 | リース契約上の取り扱い |
| 分損(修理可能) | 損傷が比較的軽微であり、適切な修理を施すことで安全な走行が可能な状態。フレーム等への致命的な損傷がないケース。 | 契約継続(ただし契約者による完全な原状回復義務・修理義務あり) |
| 物理的全損 | 車体の骨格(フレーム)が致命的に破断・歪曲し、現代の修復技術をもってしても物理的に安全な状態へ修理不能な状態。 | 強制解約 |
| 経済的全損 | 物理的な修理自体は可能であるが、その修理費用が見積もり段階で車両の事故直前の「時価額」を上回ってしまう状態。 | 強制解約 |
| 盗難 | 車両が滅失または所在不明となり、契約者の手元から失われ、物理的に返還が不可能となった状態。 | 強制解約 |
たとえ信号待ちで後方からノーブレーキで追突された「過失割合100対0」のもらい事故であっても、車両が「物理的全損」または「経済的全損」のいずれかに該当すると判定された場合、リース会社へ車両を返還することは不可能となります。
目的物が存在しなくなった以上、契約の継続は不可能であり、満了を待たずにその時点で自動的に打ち切られます(強制解約)。
ここで重要なのは、リース契約の解除事由において「事故の過失がどちらにあるか」は一切考慮されないという点です。リース会社から見れば、車両という自社の「資産」が失われたという客観的事実のみが存在し、契約者はその資産を返還する債務を履行できなかったこと(債務不履行)になります。
金融契約としての側面を持つリースにおいて、目的物の喪失は「期限の利益(分割払いを続ける権利)」の喪失を意味し、残存債務の一括弁済義務が即座に発生するのです。
自賠責保険ではリース車の損害や違約金は一切補償されない現実
強制解約という絶望的な状況に直面した際、「自動車には自賠責保険が強制的に掛けられているのだから、そこからある程度の補償が出るのではないか」と期待する契約者は少なくありません。

しかし、これは自動車損害賠償保障法の制度設計に対する決定的な誤解です。
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、交通事故における被害者の最低限の救済を目的とした社会的セーフティネットですが、その保護対象は「人の生命または身体の侵害(対人賠償)」に厳格に限定されています。相手方の治療費、後遺障害による損害、死亡時の慰謝料といった人身被害については補償の対象となるものの、車両の修理費や他人の財物を破損したことによる物損、さらにはカーリース契約の中途解約によって生じる「違約金」や「残債の清算」といった純粋経済的損失に対しては、ただの1円も保険金が支払われません。
以下の表は、自動車事故において適用される各種保険の補償範囲を、被害の対象別に比較したものです。
| 損害の対象(誰の・何に対する損害か) | 自賠責保険(強制保険) | 任意保険(加害者側の対物賠償など) | 自身の任意保険(車両保険・特約) |
| 相手方の身体(対人) | 補償される(法定限度額あり) | 自賠責の限度額を超過する部分を補償 | – |
| 相手方の車両・財物(対物) | 補償されない(対象外) | 補償される(時価額を上限とする) | – |
| 自身の身体(人身傷害等) | 相手方の自賠責から補償 | 相手方の対人賠償から補償 | 人身傷害保険・搭乗者傷害保険等で補償 |
| 自身の車両およびリース違約金 | 補償されない(対象外) | 相手方の対物賠償から補償(※時価額まで) | 車両保険、またはリース専用特約で補償 |
このように、自賠責保険だけではカーリースにおける全損リスク、すなわち「失われた車両の財産的価値」や「リース会社から突きつけられる高額な違約金」に対する防波堤には全くなりません。
相手方に100%の過失があるもらい事故の場合、車両に対する賠償は加害者が加入している「対物賠償保険(任意保険)」に全面的に依存することになります。しかし、ここにも契約者をさらなる絶望へ突き落とす、法的な「乖離リスク」という罠が待ち受けています。
相手の対物保険だけでは違約金が全額カバーされない「乖離リスク」の罠
もらい事故による全損でリース契約が強制解約となった際、被害者(リース契約者)は加害者に対して民法709条に基づく不法行為責任を問い、損害賠償請求を行う権利を有します。加害者が適切な任意保険(対物賠償保険)に加入していれば、そこから損害賠償金が支払われます。
理論上はこれで損失が補填されるはずですが、現実には「加害者の保険会社から支払われる賠償金」と「リース会社から請求される違約金」の間に、致命的かつ構造的な金額のズレが生じます。これが業界内で恐れられている「乖離リスク」です。
賠償金(時価額)とリース残債の決定的な違いとは
この金額の乖離は、損害を評価する根本的な「算定基準」が、賠償側と請求側で全く異なることに起因します。
加害者の対物賠償保険から支払われる賠償金は、不法行為法に基づく損害賠償の原則に従い、事故発生直前の車両の客観的な市場価値、すなわち「時価額」を絶対的な上限とします。時価額は、車種、年式、走行距離、市場での人気度などを総合的に勘案し、中古車市場(レッドブックなどの業者間取引相場データ)において同等の車両を調達するために必要な金額として算出されます。

自動車の市場価値は、新車として登録された瞬間に「中古車」扱いとなり、その価値は経年劣化とともに確実かつ急激に下落していきます。
一方で、リース会社が契約者に請求するのは、リースという金融取引に縛られた「リース残債(中途解約違約金)」です。これは市場での車の人気や流通価格とは無関係に、契約時に設定された固定の金利計算と支払いスケジュールに基づいて算出される金融的負債です。
この両者の減少スピード(減価償却のカーブと、債務元本の減少カーブ)には明確なズレが存在します。特に新車リースの場合、登録直後の初期償却によって車両の「時価額」は一気に20%〜30%ほど下落しますが、毎月定額で支払う「リース残債」は契約初期の段階ではほとんど減っていません。その結果、以下のような逆転現象が頻発します。
- 加害者の保険会社が評価する賠償額(時価額): 150万円
- リース会社が請求する中途解約違約金(残債): 250万円
このケースにおいて、差額の100万円について加害者側へ請求することは法的に極めて困難です。なぜなら、加害者の法的な賠償義務は「壊したモノの時価額」までに限定されており、被害者がたまたまリース契約を結んでいたことによって生じた「時価額を超える違約金(純粋経済的損失)」は、加害者が予見できない特別損害(民法416条2項)と見なされ、賠償対象外とされるのが判例上の一般的な解釈だからです。

結果として、過失が全くない被害者であるリース契約者が、この差額100万円を全額自己負担し、リース会社へ現金で一括清算しなければなりません。これが「乖離リスク」の最も恐ろしい実態です。
被害者でも発生する「中途解約違約金」の恐ろしい内訳
では、強制解約時にリース会社から請求される高額な「中途解約違約金」は、具体的にどのような計算式で算出されるのでしょうか。その内訳を分解すると、自動車リース特有の金融的メカニズムが浮き彫りになります。
違約金は、リース約款に基づき、一般的に以下の要素と数式によって構成されます。
中途解約違約金 = (残期間分の未払いリース料) + 契約時設定残価 + 規定の事務手数料等 – 未経過費用
| 違約金の主要な構成要素 | 詳細なメカニズムと契約者への影響 | 負担の重さ |
| 残期間分のリース料 | 契約満了までに支払う予定であった、毎月のリース料金(車両本体価格の分割分+金利+維持費)の合計額。契約期間の初期に全損事故が起きた場合、この金額が膨大になり、数百万円に達することが多い。 | 非常に重い |
| 設定残価(残存価格) | 契約締結時に設定された、リース期間満了時の車両の予想下取り価格。月額料金を下げるために残価を高く設定している契約ほど、全損時にはこの「据え置かれた元本」が一括請求されるため、違約金総額を強烈に押し上げる要因となる。 | 非常に重い |
| 事務手数料・損害金 | 強制解約に伴うリース会社の社内事務処理費用や、契約違反(目的物返還不能)に対するペナルティとしての遅延損害金などが加算されるケースがある。 | 中程度 |
| 未経過費用(マイナス勘定) | 残存期間に含まれていたが、契約解除により将来にわたって支払いが不要となった経費(自動車税、自賠責保険料、メンテナンスパックの未実施分など)。これらは違約金総額から控除(差し引き)される。 | 軽減要素 |
被害者からすれば「自分は一切悪くないのになぜ、将来の税金分を引かれた程度で、未払いのリース料や残価まで全額一括で支払わなければならないのか」と強い憤りを感じるでしょう。しかし、リース会社から見れば、数年後に一定の価値(残価)を持った状態で返却されるはずだった自社の資産が灰になった以上、投下した資金(車両代金)の未回収分を契約者から回収するのは金融機関として当然の措置です。

もらい事故であろうとなかろうと、リース契約という金融的清算ルールから逃れる術は存在しません。
もらい事故の違約金トラブルを最小限に抑える4つの実務的防衛策
避けられない乖離リスクと冷酷な違約金請求に対して、被害者が泣き寝入りせず、自己負担を最小限に抑えるための実務的な防衛策は明確に存在します。事故直後の初動対応から、複雑な賠償交渉に至るまで、以下の4つの実務的プロセスを一つひとつ正確に実行することが、自己破産などの最悪の事態を免れる唯一の手段です。
警察への届け出と「交通事故証明書」の必須性
いかなる交通事故においても、発生直後に最も優先すべき法的義務が警察への届け出(道路交通法第72条1項)です。現場では、リース会社への報告を気にするあまり、警察や救急への連絡が遅れてしまうケースが見受けられますが、これは本末転倒です。まずは人命救助と警察への通報による事故の客観的状況の保全を最優先しなければなりません。
この警察への届け出を経て初めて発行されるのが「交通事故証明書」です。この書類は、自動車安全運転センターから交付され(交付手数料は1通につき800円〜1,000円)、インターネットやゆうちょ銀行・郵便局の窓口でも申請可能です。

交通事故証明書は、その後の全ての防衛策の「起点」となる極めて重要な公的文書です。
加害者側の対物保険を適用して賠償を請求するにせよ、自身の任意保険の特約を行使するにせよ、保険会社は「事故が実際に発生したという公的な証明」がなければ、一切の支払い手続きや審査を開始しません。さらに、過失割合が「100対0」であるという被害者側の主張を客観的に裏付けるための実況見分調書など、裁判や示談交渉で必要となる資料を取り寄せる際にも、この交通事故証明書が不可欠となります。
相手方が「警察は呼ばずに当事者同士で内密に処理しよう」と持ちかけてきたとしても、これに同意することは、のちに発生する数百万の違約金を全額自ら引き受ける自殺行為に等しいと言えます。
リース会社への迅速な報告と「解約金概算見積書」の取得
現場での安全確保と警察による実況見分が完了し、事態が落ち着いた当日中、遅くとも翌営業日には、必ずリース会社への報告を行わなければなりません。
カーリースにおいては、車両の所有権がリース会社にあるため、事故の大小に関わらず報告することが契約約款上の厳格な義務として定められています。この報告義務を怠ったり、所有者の許可なく独断で修理工場へ搬入し修理を進めたり、あるいは全損と自己判断して廃車手続きを行ったりすることは、重大な契約違反(無断修理・所有権侵害)と見なされます。
このような単独行動をとった場合、後日高額なペナルティが課されたり、返却時の査定で修復歴が発覚して追加の違約金が発生するなど、状況をさらに悪化させることになります。
リース会社への連絡時には、以下のプロセスを踏んで今後の対応方針を協議します。
- 修理工場の指定有無の確認: リース会社によっては、提携する指定工場での修理が義務付けられている場合があるため、搬入先を事前に確認します。
- 損害状況の共有と判定: 車両が修復可能(分損)か、あるいは物理的・経済的全損に該当し強制解約となるかを、修理見積もりを基にリース会社に判定させます。
- 「解約金概算見積書」の取得: 全損の可能性が浮上した時点で、直ちに現在の中途解約違約金(リース残債)がいくらになるのか、正確な見積書を算出・発行させます。
この「解約金概算見積書」を取得することで初めて、被害者は「自分が相手に最低限いくら請求しなければならないのか」、そして「加害者の保険会社が提示する時価額との間に、いくらの乖離(ギャップ)が生じるのか」というリスクの全体像を可視化することができるのです。
弁護士法第72条の壁と「弁護士費用特約」を活用した増額交渉
過失割合が100対0のもらい事故において、被害者が直面する最大の壁が「弁護士法第72条(非弁行為の禁止)」です。
通常、自身に少しでも過失がある事故であれば、自分が加入している保険会社が窓口となり、相手方の保険会社と示談交渉を代行してくれます。しかし、過失ゼロのもらい事故の場合、被害者側の保険会社は加害者に対して支払うべき賠償金(対人・対物)が一切発生しません。
保険会社は、自社が保険金を支払う義務のない事件において、顧客の代理として示談交渉を行う法的権限を持ちません。これを行うと弁護士法第72条違反(非弁行為)となるため、保険会社の担当者は制度上、被害者を助けることができないのです。

結果として、法務や保険の素人である被害者が単独で、加害者のバックにいるプロの保険会社担当者と、高度な損害賠償交渉を行わなければならなくなります。
ここで極めて有効かつ必須の防衛策となるのが、自身の任意保険に付帯されている「弁護士費用特約(日常生活・自動車事故型など)」の活用です。
この特約を行使すれば、弁護士への相談費用や、示談交渉・訴訟にかかる着手金、報酬金などの費用が原則として補償されます。例えば損保ジャパンの例では、被害事故弁護士費用保険金として1事故につき被保険者1名あたり300万円を限度に、法律相談費用として10万円を限度に実費が支払われます。300万円の枠があれば、大半の交通事故の弁護士費用を自己負担ゼロでカバーすることが可能です。
弁護士が介入することで、加害者側に対する賠償額の増額交渉において、以下のような専門的な法的アプローチが可能となります。
- 「時価額」の再評価と引き上げ交渉
加害者側の保険会社が提示する「時価額」は、自社の支払いを抑えるために意図的に低く(下取り価格に近い基準で)見積もられていることが多いです。弁護士は、「交通事故損害額算定基準(青本)」や「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)」といった裁判所基準、さらには中古車市場における実際の小売価格データを根拠に、時価額の妥当性を争い、賠償額を適正な水準まで引き上げることが可能です。 - 評価損(格落ち損害)の請求
全損にならず修理可能な事故であったとしても、フレーム等にダメージが及び修復歴(事故歴)がつけば、リース契約満了時の査定で車両価値が著しく低下し、原状回復費用として追加請求されるリスクがあります。弁護士を通じて交渉することで、一般的には修理費の10%から30%程度を「評価損(格落ち損害)」として賠償額に上乗せさせることが判例上も認められやすいです。新車に近いリース車両ほど、この評価損が認められる確率は高くなります。 - もらい事故特有の違約金損害の主張
前述の通り、時価額を超える違約金分は原則として賠償対象外(特別損害)とされますが、弁護士が介入し、加害者側が「被害車両がリース車両であること」を事故直後に認識し得た特段の事情を立証できれば、交渉の余地が生まれるケースもゼロではありません。
専門家である弁護士に交渉を委任することは、プロの保険会社に丸め込まれ、不当に低い賠償額で示談を成立させられてしまう事態を防ぐための最強の盾となります。
今後カーリースを利用するなら必須!もらい事故から身を守る保険選び
前述の事後的な防衛策をどれほど緻密に講じたとしても、現行の不法行為法の構造上「時価額」を超えるリース残債分については加害者に支払い義務が生じないという根本的な「乖離リスク」を、示談交渉だけで完全にゼロにすることは困難です。
さらに、万が一加害者が対物賠償保険に加入していない「無保険車」であった場合、賠償能力のない相手から数百万円を回収することは実務上不可能に近く、被害者が全額を泣き寝入りして負担する最悪の事態に直面します。
この構造的なギャップを完全に埋め、自己負担を確実かつ完全にゼロにするための唯一の最適解が存在します。それが、カーリース契約の開始と同時に「リース車両専用の任意保険(特約)」を付保することです。
リースカー車両費用特約(全損特約)で残債を全額カバーする
一般的な任意保険における「車両保険」は、あくまで自車の「時価額(協定保険価額)」を上限として修理費用や全損時の保険金を支払う仕組みです。したがって、一般的な車両保険に加入していたとしても、全損による強制解約時には「時価額」までしか保険金が下りず、リース残債との差額分についてはカバーしきれず、結局のところ数十万〜数百万円の自己負担が発生するリスクが残存してしまいます。
このリース特有の致命的な欠陥を解決するために、損害保険各社が提供しているのが「リースカーの車両費用特約(リース専用特約)」です。
例として、損害保険ジャパン(損保ジャパン)が提供する一般自動車保険『SGP』における「リースカーの車両費用特約」のメカニズムを解説します。この特約は、リース車両が衝突事故や盗難などにより全損(物理的または経済的全損)と判定された場合、加害者からの賠償金だけでは足りない「リース契約中途解約費用(違約金)」の全額を、直接保険金として支払うという画期的なものです。
この特約には、一般的な車両保険とは一線を画す、リース契約者にとっての強烈なメリットが存在します。
1. 残債との完全な一致(ギャップの解消)
保険金の支払い上限が「車両の時価額」ではなく、「リース契約の中途解約費用(違約金)」そのものに設定されるため、加害者の対物賠償だけでは足りない時価額と残債のギャップが完全に埋まり、契約者の持ち出し(自己負担)は事実上ゼロとなります。加害者が無保険であった場合でも、この特約から違約金全額が支払われるため、極めて強力なセーフティネットとなります。
2. 全損時の自己負担額(免責)の完全免除
通常、車両保険においては保険料を安く抑えるために「自己負担額(免責金額)」を設定することが一般的です。しかしこの特約では、リース車両が全損となり解約費用を補償する事態においては、設定された自己負担額を差し引くことなく、違約金全額がそのまま保険金として支払われる仕組みになっています。
3. 関連する付随費用の別枠補償
全損となった車両が自力走行不能になった際のレッカー移動などの運搬費用、現場での応急処置費用、または盗難された車両の引取費用など、契約者が支出した実費について、1事故につき合計15万円を限度に、メインのリース車両費用保険金とは「別枠」で追加の支払いが受けられます。
カーリースを利用するということは、単に車という「移動手段(モノ)」を借りるだけでなく、数年間にわたる「金融的な負債」を抱えることを意味します。したがって、加入すべき保険も、単なるモノの価値(時価額)を守る一般の車両保険ではなく、負債(違約金)そのものを相殺・清算できる「リース専用の特約」でなければ、リスクヘッジとして不完全と言わざるを得ません。
これからカーリースを契約する、あるいは現在契約中で任意保険を見直す際には、この特約の付帯を必須条件とすべきです。
まとめ
もらい事故は、運転者がどれほど安全運転を心がけ、交通ルールを厳守していても、物理的に避けることが不可能な災難です。しかし、カーリース契約においては、「被害者であり過失が全くない」という情状酌量の余地が、リース契約の強制解約と高額な中途解約違約金の請求を免除する理由には一切ならないという冷酷な現実が存在します。
加害者の対物賠償保険から支払われる「車両の時価額」と、リース会社から請求される「リース残債(未経過リース料+設定残価)」の間には、評価の根拠となる法理と金融計算の違いにより、数十万から数百万円単位の構造的な「乖離」が必ず生じます。

これが、もらい事故で被害者が理不尽な多額の自己負担による借金を背負う最大の要因です。
この理不尽なリスクから身を守り、被害を最小限に抑えるためには、事故発生直後の証拠保全(警察への通報と交通事故証明書の取得)、所有者であるリース会社への速やかな報告と解約金見積もりの確保、そして弁護士法第72条による交渉の孤立を防ぐための「弁護士費用特約」を活用した専門的かつ戦略的な示談交渉が不可欠です。
さらに、事前の完全な防衛策として最も強力かつ確実な手段が、自身の任意保険に「リースカー車両費用特約(全損特約)」を付帯しておくことです。この特約を備えておくことで、加害者の賠償額が残債に満たない場合や、加害者が無保険車であった場合でも、高額な違約金を保険金によって完全に相殺し、自己負担をゼロに抑えることが可能となります。カーリースの魅力を享受するためには、月額料金の安さだけでなく、リース特有の金融的・法的リスクを包括的にカバーできる専用保険の設計が絶対条件であることを深く認識する必要があります。
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よくある質問
もらい事故で車が全損した場合、新しいリース車はすぐに手配されますか?
代わりの車両(代車や新しいリース車)がリース会社から自動的かつ無償で手配されることは一切ありません。
車両が全損と判定された時点で、現在のリース契約は目的物滅失により「強制解約(終了)」となります。再びカーリースを利用して車に乗りたい場合は、まず現在のリースに対する残債(違約金)の清算を完了させたうえで、全く新しいリース契約を初めから結び直す必要があります。当然ながら、新規の契約となるため、改めて信販会社等による与信審査を受け、これを通過しなければ新しい車を調達することはできません。事故による経済的ダメージに加え、車を失うことによる生活・業務への影響も甚大となるため、事前の特約による備えが極めて重要です。
加害者が無保険だった場合、違約金は泣き寝入りするしかないのでしょうか?
相手方が任意保険(対物賠償保険)に未加入である「無保険車」であった場合、事態は非常に深刻です。
賠償能力(資金力)のない個人の加害者から、裁判を通じて数百万円に上る違約金を回収することは実務上極めて困難であり、自己負担による「泣き寝入り」となるリスクが跳ね上がります。このような絶望的な事態を完全に回避するためにも、自身の任意保険における「リースカーの車両費用特約」への加入が文字通りの命綱となります。この特約が付帯されていれば、相手が無保険で賠償金が1円も取れなかったとしても、自身の保険からリース解約費用(違約金)の全額が支払われるため、自己負担の危機を確実に回避することができます。
むち打ちなどの治療費とリース違約金は別々に請求できますか?
はい、それぞれ全く別の保険の枠組み(算定基準)から請求を行うことになります。
事故によるむち打ちなどの人的損害(病院の治療費、通院に要した交通費、休業損害、慰謝料など)は、加害者が加入している「自賠責保険」および、それを超える部分は任意保険の「対人賠償保険」から支払われます。一方で、リース車両の破損に伴う強制解約の違約金(物損および経済的損失)は、加害者の任意保険の「対物賠償保険」に対する損害賠償請求として扱われます。
このように、請求先や賠償額の計算根拠が「人への損害」と「物・契約上の損害」で法的に完全に分離されているため、それぞれの手続きを並行して別々に進めることが可能です。人的損害の交渉が長引いている場合でも、物損(車両損害)についての示談を先行させることも実務上よく行われます。

